彼に殺されたあたしの体
頬を無理やり千切られ、奇妙に歪んだ唇を別の犬が噛み千切る。


ブチブチと肉片を破壊していく飢えた犬たち。


それはまるで1人の美少女にたかる男のようで、どこか官能的でもあった。


複数が一匹を求めて奪い合う。


そんな光景。


食欲と性欲というものはとても似ている。


そんな事を考えて、クスッと笑いたい気持ちになった。


その時だった。


土の上から物音が聞こえてきて、あたしはハッとした。


思考回路を停止させ、耳に神経を集中させる。


バタンッ!


なにかが閉まるような音が聞こえてくる。


この音は……車のドアを閉める音に似ている。


そしてこちらへ歩いてくる1つの足音。
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