偽フィアンセは次期社長!?
「あーーー……、それね」


また、悪い顔で笑う。


「うん、必要になったら呼ぶわ」


ぽんぽん、と頭を叩かれ、くるっと身体の向きを変えられる。


「え……」


脅すだけ脅して、帰れとか、逆に恐ろしいんですけど……。


戸惑うあたしをよそに、回り込んで誘導され、完全に″お帰り下さい″モード。


帰り際に持たされた社用の封筒という小道具のお陰で、怪しまれることなく退散してしまえるという……。


一体、なんなんだろう。


とりあえず、あたしは松田課長に弱味を握られていて……


しかも、完全にあっちペースで……


駄目だ、深く考えたら絶望して泣きそう……。


爽やかな、


「わざわざお世話様でした、浜崎さんによろしくお伝え下さい」


という声を背中に浴びながら、あたしは重い気持ちで自分のフロアーへと向かった。
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