昨夜の記憶
道端に空き缶を見つけ、蹴る。軽く蹴ったにも係わらず缶は十メートル先まで転がっていった。深夜なのでかなり大きな音が響き渡り思わず辺りをキョロキョロと見回す。
「もう缶蹴りはやめ!」
ひとり呟き家路を急ぐ。自宅のマンションに着き、エントランスに入り鍵を差し込み自動ドアから中へ入る。郵便受けを確認してからエレベーターに乗り、五階のボタンを押す。502号室へ鍵を開け入る。玄関の明かりを点け、靴を脱ぎ、寝室へ入り服を部屋着に着替える。洗面所で顔を洗い、タオルで拭こうと思い、タオル掛けに手を延ばすがタオルが無い。仕方なく畳んである新しいタオルを取り出し顔を拭く。お風呂の湯張りボタンを押し、リビングへ移動しソファに座る。リモコンを手に取りテレビを点ける。チャンネルを変えて見るが、深夜なのでニュースもやってない。テレビを消しさっき買ったポッキーを掴み中身を取り出す。
「夕食はおにぎり二つだったし大丈夫!」と言い訳して、二本口に入れ、これも先程買った雑誌を手に取り、ソファに横になる。クッションをお腹に抱き、俯せで雑誌を見る。先に後ろの方のページを開き、1ページだけ書かれたコラムを読む。最近はこれを読むのが楽しみで買ってるような気がする。
雑誌を見るのも飽きて、手近にあった文庫本を手に取り今度は仰向けになって読む。私のお気に入りの太宰治の「女生徒」だ。特にこの最初の辺りのリズムがいい。なんとなく幸せな気分になってくる。会社で嫌な事があったので尚更だ。読んでるうちに眠くなってきて、そのままうとうとする。文庫本が手から落ち、ソファから転がり落ちて目が覚める…寝室のベットから落ちていた。
「あれ?なんでベットに?って言うかお風呂!…朝でいいか。」
時計を見ると午前3時を指していた。
--END--
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop