太陽の家
上原由希
そっと目を開けると、目の前にはだれかの旋毛が見えた。

「………………」

何か苦しいから、多分自分に抱きついているんだろう。

「くるしーです」

「えっ?」

………イモ子だ。

よく見たら、キャバも、クモも、ユキも、ニートも、みやちゃんまでいる。

視界がぼやけてよくわからないけど………タイヨウの家にいた。

「タイヨウ……よかった……生きてた」

そう言ってイモ子はまた抱きしめてきた。

ふと自分の手元に目をやると、そこにはある単語が書かれていた。

〝和久 雨〟

無意識に、和久の本名を書いていた。

何となく、記憶が戻ってきた。

病院を脱走して、焼けた家の惨状を目にして、花壇の上で泣き崩れ……そして、手首を切った……。

「たいよう……死なないで……しんじゃったら、嫌だ……」

「イモ子?」

「……死ぬつもりだった?」

宮子は涙目でタイヨウの肩に手をおいた。

「……死ねなかった」

「タイヨウ……」

イモ子は、抱えていた袋から植木を出した。

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