私が愛したのは最低な人間でした

埼玉の県立高校に入学して、一年と一カ月が経過しようとしていた頃、突然、父親の転勤が決まった。





それなりに勉強して受験した高校で、念願の高校生活が送れて、友達と親しくなり始めて。



少しヨレてきた制服を着込んで、中学では禁止だったピアスやネックレス。



髪にはワックスを付けて見た目をよくして、放課後は部活や遊びで盛り上がって。



新しい学年になって、多くの人と知り合って、学校生活が楽しすぎて、今後行われる行事にも期待していた。





そんな時期だった。





最初はついて行く気なんてなかった。





高校は辞めなきゃいけないって言われて、それが嫌だった。



だったら独り暮らしで、バイト生活に明け暮れる方がいいんじゃないかなって思っていた。



せっかく出来た友達とは離れたくないし、小学校、中学校で一緒だった人達とも
未だに遊んでたし。



何よりも、大切な人と過ごした思い出の詰まった地元だったから、そこを出て行く気にはなれなかった。





大きなランドセルを背負って、笑い合いながら小学校に通っていた日々。





あの時の幸福な時間を忘れたくない。



ずっとこの町で感じていたい。



もう、その人はこの町にはいないけど。



二度と会うことはないかもしれないけど。



それでもここから離れたくなかった。





初恋で、今でも想い続けている大好きな人と過ごした、最初で最後の場所だから……。


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