GOING UNDER(ゴーイングアンダー)

 姉にとはいえ、琴子に断りもなく梅宮紀行のことをしゃべっていいものかどうか。
 しかし、琴子のママは何か感づいてだか勘ぐってだかいる様子だし、この際姉とは共同戦線を張っておいたほうがいいかもしれない。梅宮紀行がまたうちに電話してくるかもしれないし、きちんと説明して改めて口どめをしておく方が安全かも。

 迷っている美奈子の顔を覗きこんで、真由子は言った。

「美奈子、本音をいえばわたしはあなたに、桜井のうちにはあまりかかわってほしくないのよ。琴子ちゃんはいい子だけど、あのおばさんにはちょっと非常識なところがあるっていうか、人を人とも思ってないようなところがあって……あなたは知らないだろうけど、わたしたちが高校の頃、いろいろあったりもしたし……」

 黙って見返す美奈子に、真由子は困ったように笑って、

「あなたにとって琴子ちゃんが大事な友達だって知ってるし、少なくとも琴子ちゃんに罪はないと思うから、あなたの行動を規制する気はさらさらないんだけど、少なくとも、あのうちに対してはもっと用心した方がいいと思うわけよ」
「用心?」
「ええ。わたしたちが高校2年のとき、桜井知明とつきあってて、あの人にひどい目に遭わされた人がいるの」
「琴のママに?」

 真由子は黙って頷いた。
< 28 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop