10回目のキスの仕方

離したくないんだけど

* * *

「明季ちゃん…大丈夫でしょうか。」
「越前は襲いはしないと思うけど…。」
「そういうことを心配してるんじゃありません!」
「うん。神崎さんの心を心配してるんでしょ?」

 美海は小さく頷いた。洋一は明季に何を言ったのだろう。そして明季はそれをどう受け止めて、何を返したのだろう。

「…案外大丈夫な気がするんだけど。無責任だけど。」
「どうして、ですか?」
「神崎さんも、…一人でずっと抱えているのは苦しいだろうから。」
「…それは、まるで私に言われているみたいです。」
「ごめん、そういうつもりは…なかったけど。」
「いえ。圭介くんの優しさを考えたら…そう言ってくれますね。」
「…何度も言ってるけど、美海は俺を買いかぶりすぎだって。」
「そんなことはないです!」
「俺を聖人君子だと思ってるだろ?」
「そんなこと…ない、と思うんですが…。」
「じゃあ…。」

 ぐいと腕を引かれて強い腕に抱きしめられると、大好きな香りが全身を包んだ。耳元でそっと囁かれる言葉に、身体が一瞬強張った。

「…離したくないんだけど。」
「え…?」
「帰らせないって言ったら、美海はどういう顔をするの?」

 腕の力が抜けて、少し距離ができた。ゆっくりと顔を近付けられては逃げ場がない。目だけ泳がせる。

「…美海。」
「…なん、でしょう?」
「顔、上げて?」
「む、…無理です。」
「なんで?」
「顔を見せられないからです。」

 突然息が詰まるほどに甘くなった空気に、窒息しそうだ。ゆっくりと自分の顎にかかった細い指に、顔を上げられた。視線が絡み合うと、頬の熱は上昇した。

「…真っ赤。多分、今まで俺が見た中で一番。」
「…い、言わないでください…!余計に熱くなります。」
「それって俺の言葉の意味がわかるからだよね?」

 意味がわからないほど、子供じゃない。そして、それを拒めるほどの強い意志もない。恥ずかしさはあれども、嫌ではない。
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