レオニスの泪

夏の風は、温(ぬる)い。


無いよりはマシだが、自転車を漕いで止まった時に、汗が吹き出してくる。


それに付け加え、昨今の陽射しは尋常ではない。


朝からギラギラと、容赦無く照りつけてくる。



真っ黒なアスファルトの照り返しもまた、しんどさを増す要素だ。




家を出て、保育所へ向かう道のり。



今日はいつもよりも、早めに家を出ることができたせいか、通りを歩く人々のカラーが違った。



ー数分の違いなのになぁ。



ペダルを踏みながら、そんなことを考えていると。



「ねぇ、ママぁー」



後方から声が掛かる。



「何ー?」



トイレにでも行きたくなったかなと、訊き返せば。



「最近、お仕事たいへん?」




「ーえ?」




考えてもいなかった質問をされて、もう一度訊き返してしまった。



「だからぁ、、ママ、最近お仕事、たいへんなの?」



慧は、さっき私の耳に届いたのと同じ質問を繰り返した。
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