レオニスの泪


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結局マンションに帰ったのは、午前0時を少し過ぎた頃だった。

静まり返った部屋で、反応するのは、センサー式の照明だけ。


車のキーと、既に外してあった指輪を棚の上に並べ、それから持っていた仕事用の鞄を開ける。




書類の束の脇に、僅かに顔を出す、ビニールに入った青い、タオル。


アイロンで糊付けされた名前テープに、書かれている文字は平仮名。



はやま けい


返しそびれたまま、鞄に入りっぱなしになっている。


本来であれば、もっと早くに持ち主のもとに届いていた筈なのだが。



ーまさか、鉢合わせてたなんて、ね。




洗面所で腕時計を外し、手を洗う自分が、苦虫を噛み潰したような顔をしているのに、鏡を見て気付く。


2度目の診察の際の、葉山祈の表情の硬かったこと。

理由を白状させるのに、さして時間は掛からなかったけれど。


『ひとでなし』『女遊びし放題』等、全く有り難くないワードを投げつけられ、少しもダメージを受けなかったかと言えば、嘘になる。



住所を確認して驚いた。家が近いのかと思っていたが、まさか、ここまで近いとは。




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