レオニスの泪


熱いものがこみ上げてくる。

後から後から、渾々と。

花束を綺麗に覆う紙や、コンクリートの床にポタリポタリと点を付けていく。
結局拾い上げて、漸く鍵を開けて中に入るが。


「ふ…」


入って直ぐ、ドアポストのあるそこで。

中まで我慢が出来ずに、しゃがみこんだ。

再び家の中に落とされた花なんかにも構わずに。

やっと流れた涙は生きていることの証。

食いしばって出た血も同様に。

だけど、生きるという事は、なんて辛いことだろう。

何て残酷なことなんだろう。


「け…い…慧…慧」


息子の名前にしがみつくみたいに、何度も呼んで、しゃくり上げながら、一人泣く。

誰も見てくれない。
誰も気づいてくれない。

たった一人で、生きてきたから、たった一人しかここにはいない。

誰も心配してくれない。
誰も大切に思ってくれない。


自分は一人ぼっちだ。

今も昔も。

ずっと。








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