レオニスの泪
カルテⅩ


最後の休みの日。
慧を連れて、水族館に行った。


「ママぁ、見てみて!今、ジャンプしたの、クジラなんだって!」


円形になっている会場で、イルカショーを観ているのだが、始めに調教師のお姉さんから四頭の内、大きい二頭はオキゴンドウという鯨なんだと紹介されていた。

知っている鯨と比べると体つきは小さいが、イルカに比べると断然大きい。
にも関わらず、軽々と跳ねては観客を魅了している。


「本当だね、大きいから、水しぶきもすごいね。」


暑い季節はとっくに過ぎたのに、前方の席はびしゃびしゃに濡れていて、慧がそこに行きたいと言わないでくれて心の中で感謝する。


「楽しかったねぇー!」

「ね、すごかったね。ちび鯨」



平日のお出掛けに、慧は大袈裟すぎる程喜んだ。

天気も味方してくれたようで、気温は低めだが、陽射しがある。
空はすっきりと青かった。


会場から出ると、お土産コーナーで、慧に一つだけ、と言って選ばせた。
中々混雑していて、慧を見失わないようにしなくては、と思いつつ。

ー神成先生にも、何か買っていくかなぁ…

自分のお土産もチェックしたりする。
< 357 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop