レオニスの泪

反応のない唇が、離れるのに、そう時間はかからなかった。
自然に零れ出る溜め息と一緒に、目の前の人を見上げることはできなくて。

神成といると、いつもそうだ。
私のやる事は、全て見透かされていて、一方通行で、この人にとって私はただの精神疾患者でしかない気がする。


「……すみません……」


みじめだった。

ぶつけても返ってくることのない想いは、持っているだけで蝕んでいく気がする。

――やっぱり、頼れない。頼っちゃ駄目なんだ。

拒むことはしないって言ったけれど、これじゃ同じようなものだ。
こんなことして、もう、文字通り、顔も見れない。

下心があるのはこっちの方。
こんな女で、神成はさぞかし幻滅したことだろう。

でも、何が正解なのか、もうわからない。

ただただ、木戸が怖くて。
これからの将来が怖くて。

寒くて。
温もりが欲しくて。
ぎゅっと抱きしめてもらいたくなった。

大丈夫だよ、と守ってもらいたかった。

今迄は。

全部ひとりで身体を抱えて座り込んでいただけだったから。
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