レオニスの泪
カルテⅪ





よく晴れた朝。

乾燥した空気は、頬をピリピリと刺激する。
自転車で風を切ると尚の事だ。


「いってらっしゃい!」

あと少しすれば、小学校に入る我が子は、近頃大分お兄さんになり、保育所での朝のお別れも、すんなりと済むようになった。


「いってきます」


幼い子ですら、短い期間で、こんなにも頼もしく成長するのに、自分はいつから成長が止まってしまったんだろうと、若干苦々しく思う。

身体の成長が止まれば、内面の成長も止まってしまうのか。


――いやいや、そんなことはない。


慧と別れて、自転車に跨りながら、卑屈になってるなと反省した。


――先生は、顔に似合わず、中身が成長し過ぎてるし。


あの夜、神成に言われた事が、図星過ぎて、格好悪いやら恥ずかしいやらで、結構どん底な気分なのに、空がこんなに晴れていて。



「っっはぁーー」



しかも、これからの予定が、更に気を重くさせる。

それをなんとか逃そうと、走り出した自転車と一緒に、盛大な溜め息を吐いた。










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