レオニスの泪
ススン、ススンと、鼻を啜る音が、夜道に響く。


風が吹いて、下ろした髪を小さく揺らす。


当てもなくふらふらと、歩き続けて、いつもとは違う方向に自分の足が向かっていることに気付いた。



といっても、家からは徒歩10分圏内。


幼い慧が、母の不在に気付いて大泣きしてしまうから。


少しだけ気分転換をしたら、目を覚ましてしまう前に、直ぐに帰らなければならない。




―確か、この先はさくら公園か。



春になると、植えられた桜が満開になることで、そう呼ばれているが、本来の名称はもっと固かった気がする。




慧を遊ばせる以外には行かない場所だ。



夏の今、公園に桜の花はないけれど。



―そこまでいったら、帰ろう。



なんとなく自分の中で目的地を決める。



歩く度に、涙の痕が乾いてひりつく。



やっと、涙が完全に止まったんだな、と安心した。





さくら公園は、入り口や生垣がない為に、どこからでも自由に入ることができる造りになっている。



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