バレない嘘をついてよ。



「さ……き? 」




……誰?




「さえ……佐伯? おい、佐伯⁉︎ 」





目を開けるとーー




「や、夜神⁉︎ 何でアンタが! 」

「いでっ! いきなり立ち上がんなよ、この石頭! 」

「ご、ごめん」




いきなり立ち上がったせいか、
夜神とぶつかってしまった。





辺りを見回すと、
葯伊江はいなかった。


あのゾッとするような笑顔が、
脳裏に浮かんでくる。




「佐伯、どうしたんだよ。こんなとこで倒れて、誰かにやられたのか? 」

「うんうん、ちょっとクラってきただけだから大丈夫だよ」





……言えるわけない。

もし言ったら、葯伊江がきっとーー




「佐伯? 大丈夫か? 」

「え、うん大丈夫だから」




嘘の笑顔を私は、
夜神に見せた。



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