【完】向こう側の白鳥。








靴音が響いた。



人気のない静かな廊下にそれは、よく響く。





「……昼休み、もう終わるぞ。」





聞こえてきた声に、心が落胆したのがわかった。





「なんで、沢渡先輩なんですか……。」





まるで八つ当たりのような言い草。





……少しばかり期待していた自分に腹が立つ。



もしかしたら、一ノ宮先輩が追いかけて来てくれるかもなんて……。





「俺だと不満か。」



「不満です……。」





私の好きな人は一ノ宮先輩なんだから……。





「一ノ宮先輩がいい……!」





一ノ宮先輩に、愛されたい。





……誰かの代わりじゃなく、“白鳥柚子”として……。





叶わない願いも、大き過ぎた。








< 118 / 390 >

この作品をシェア

pagetop