【完】向こう側の白鳥。
私はかと言えば、ただ呆然とその場で立ち尽くすだけ……。
「デート……?」
私と、一ノ宮先輩が……?
信じられない。
二度、目をパチクリとする。
「柚子ちゃん?」
隣の家の二階窓から菜子ちゃんが体を乗り出す、その時まで。
私はずっと、一ノ宮先輩の去った方を見つめていた。
「あ……夕飯、買い忘れた。」
ふと思ったのはそんなこと。
今更買いに行くのも何だかバカらしくて、家に何か具材はあったかな。
なんて思いながら、私は家への扉を開いた。
「……変な柚子ちゃん。」
菜子ちゃんが小さく呟く。