影光 ーmoonlightー
「うわっ先輩ゲームへたくそ!!」




「アクションとシューティングなら

いけるんだけど…」




「男子の趣味ですよ、それ」






好きになるのは自由ですけどね、と



梶山くんは微笑んだ。




あの後目が赤くならないようにタオルをあて



ずっと抱きしめてくれていた。





付き合ってまもないのにこの進展度はいかなるものか


とも思ったが




今はもう、どうでも良かった。



告白されても適当に付き合って別れてを繰り返していたから




あまり真剣に付き合ったことはない。




しかし梶山くんはもちろん好きだ。


だから真剣になろうとすると


何だかうまくいかない。



我ながら面倒な不器用だと思う。




「うあ~っ!!また負けた!!」


「弱いですね。予想以上に」


「真正面から言われると傷つくね」


「すいません。でも


弱いのは事実です☆」



「失礼だね!?」




ひーひー言って笑ってる梶山くんに



思いっきり抱きつく。


こちょこちょー。




すると予想外な反応が。




「きゃんっ!!」




…女子か!!





声を上げ飛び跳ねている梶山くん。



なんと面白い。
(やっぱり可愛い系男子なのである)



私は楽しくなってこちょこちょを続ける。




「うぎゃあっちょっやめてください!!」




「やだ~」




「おりゃっ」





梶山くんの反撃。




肩をやられました。えぇ。




「ひっ死ぬ死ぬ死ぬ!!」



「死なないですから大丈夫です」



「やめてー!!やだやだ!!わーわーわー!!」




いつの間にかこちょこちょ合戦になっていて



終わる頃には二人とも息が上がっていた。



疲れて仰向けになる。



ふわっと梶山くんの柔軟剤の匂いが広がる。



すごくいい匂いで猫のように梶山くんにすり寄る。




「んふ」



「なめこですか?」



「んんふふ」



「…違うんですか」




謎の会話を楽しんだ後二人でぼーっとした。



時間は私達を置いていく。




時間は戻れない。




でも、進むことはできる。





この時間さえ幸せに思えるように



今だって前にしか進めないのだから。




end
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