あの夏の日をもう一度



セムナイは一人で川道を歩いた。
なんで、神琴は?なんで、なんで?セムナイは必死で考えたが答えを出すことはできなかった。
足は知らぬ間に進んでいく。気がつくとそこには滝があった。
「神琴」
ここは神琴と2人で朝まで女子トークをかよわせた、想い出の場所だった。いや、この森すべてが神琴と過ごした。想い出の場所になってた。
「セムナイ!久しぶりじゃない。
最近来ないから、心配したのよ」
「アルク、ミスト、ウォッカ」
この3人はセムナイが初めてこの森に来た時に声をかけてくれた人魚たちだ。
「セムナイ?」
気づいたら、セムナイの頬に涙が浮かんでいた。セムナイはすべてを話した。
「あんた変わったね。昔は人間なんてくそくらえって感じだったのに」
(そうだ、私は昔人間が嫌いだったんだ。心の中で誰かをけなす人間が。けど、神琴は違った。他人じゃなくて自分を責めてる。今もずっと責め続けてる)
「なんか、悔しいな」
「えっ?」
そういったアルクは全然悔しそうな顔などしてなかった。逆に嬉しそうな顔をこちらを向けていた。
「だって、10年一緒にいたおれたちにも完全には心開かなかったろ?なのに、5年もかからずに開いちゃうんだもん。しかも、その子のことで、悩んでるしさ!」
うんうんとミストとウォッカが同調する。
「ごめん、行かなきゃ」
「大事なら、絶対に手放しちゃダメよ」
「うん!ありがと」
セムナイは動き出した。
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