今日もまた果てない歯車の中で【短編】
今日モマタ果テナイ歯車ノ中デ
あれから十数年、
僕が彼女の墓を人知れずひっそりと立てて以来。
街は不作が続き、疫病が流行り、衰退の一途を辿るようになった。
やはり彼女がいたからこの街はもっていたのだと、僕はどこかで思っていた。
苦しくなっていく暮らしの中で、僕は誰にも知られずに彼女の子を育てた。
いつの間にか、母親とそっくりな容姿になった少女には、言葉を覚えさせるように自身の母親の話を聞かせ続けた。
「私、お社に行くわ」
満月が欠け始めた夜だった。