よくばりな恋


「翠?」

しゃくりあげるわたしの背中に腕を回し、背中を撫でる。まるでダダを捏ねる子供をあやすように。お父さんと同じ温かい手で。

「翠、また熱があがる。泣くな」

胸の奥の気持ちがあふれて、もう知らないフリはできない。

わかってるよ、紗英。絶対に言ったりしない。大事にまたしまっておくよ。ただ今は、背中を撫でるこの大きな手に甘えたいだけだから・・・・・・・・・・。
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