キミが教えてくれたこと

お昼休みに入った頃、茉莉花は担任に頼まれていたプリントをみんなの分集めて職員室に向かう


『失礼します。』

引き戸を開けて周りを見渡すと、担任がコーヒーメーカーの前でコーヒーを淹れている所だった

「おー、林悪いな」

カップから湯気が出ていていい香りが広がる

担任は自分の席まで行きコーヒーカップを置いた

茉莉花はそのままプリントを持って担任の机まで行く


『お休みの子以外は全て集めてます』

「おー、ありがとな」

屈託のない笑顔を向けられこちらも笑みを零し、では、と出て行こうとすると林!と呼び止められた


「桜庭はどうだ?みんなとうまくやってるか?」


担任に聞かれ、転校して来た頃からを思い出してみるがハルトの言う通り脱走癖がことしか思い浮かばなかった


『他人と関わることを避けている様に感じます。転校してからみんなの輪の中に入ろうともしていないので…』

やっぱりか…と担任は肩を落とす


「いろいろ事情があって転校して来たんだが…、うちの学校で楽しんでくれたらと思ったんだけどな…」

いろいろな事情と言う部分には突っ込まず、そうですかと返した


「林も今は楽しそうにしてくれてるし、桜庭の気持ちが分かる部分もあるかもしれない。無理にとは言わないが、出来たら歩み寄ってほしい」

俺もいろいろ策を練るよと言う言葉を聞いて茉莉花は職員室を出た



「やっぱ訳ありなんだなー」

『でも、根本的な理由が分からなければ歩み寄るのも難しいような…』

うーん、と顎に手を添えて考えながらハルトとゆっくり話せるように中庭に向かった


いつものベンチが見えてくるとそこには先約がいた

珍しく晴れた今日。太陽が周りにある緑に反射し、暖かい日差しが差し込んでいる

そこにいたのは紛れもなく、先程話に出た転校生で透き通るような白い肌はその光に溶け込んでしまいそうなほど綺麗だった


彼はベンチにもたれ腕を組んで目を閉じて眠っている

地面に落ちた葉っぱを踏んでしまい、カサッという音とともに彼はこちらを向いた

時間にすると1、2秒だったが、その目に見つめられた瞬間、まるで時間が止まった様に感じた


『あ、ごめんなさい』

彼はまたか、と言うようにため息を吐き立ち上がって茉莉花の横を通りすぎる

『ちょ、ちょっと!』

思わず声をかけてしまった

彼は振り返り美しい顔にそぐわないようなキツイ目つきで茉莉花を見た




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