アロマティック
「まぁ、それもひとつの方法ではあるよね」

 聖の提案に天音が頷く。
 理花ならEarthのファンでもあるし、賄賂をちらつかせれば、もしかしたら聞き出すのも簡単かもしれない。
 目を閉じ胸の前で腕を組んで、会話に集中していた永遠が、聖の案を冷静に分析する。

「いや。どーかな。話しは仕事の斡旋のときとは違うからな。ふたりの友情が厚ければ厚いほど、簡単にはいかないだろ。みのりの過去の重さを知っている幼馴染みが、そう簡単に口を割ると思うか? 」

 いい策を探すこともできず、一同は黙り込む。

「わかった!」

 拳を握りしめた聖が、大きく頷いて立ち上がった。注意を引くその動きに、朝陽以外の注目が集まる。

「みのりちゃんを恋愛脳にすればいいんだよ」

 ね? ね、ねっ!? 素晴らしいアイディアだろ!? 皆に相づちを求める聖。

「恋愛脳……」

 なんだそれは? 空が険しい表情を浮かべる。

「まず、みのりちゃんを恋愛脳にして、恋愛モードにするの。で、心のガードが緩くなったところで、過去になにがあったのか聞き出せばいいんだよ!」

 俺、天才! といわんばかりのドヤ顔。

「聖さん、ぜんっぜんわかってない」

 全くこの人は。天音が呆れて首を振る。
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