アロマティック
 現場に到着して車を降りる永遠を、みのりは追いかける。いつものように、手にはアロマや基材の入ったトランクを持って。
 颯爽と歩く永遠の姿。意識してモデル歩きをしているわけでもないのに、目を引くハンサムな顔立ちに、スタイルのいい9頭身、長い足を片方ずつ前に踏み出す姿は、堂々としていて絵になっていた。
 入待ちの女性や女の子たちが、一目でも永遠を見ようと集まっている。その前を通りすぎる永遠が笑顔を投げかけると、黄色い声があがった。
 前から思っていたけど、ファンの人たちはどこから情報を集めているのだろう?
 いく場所いく場所で、必ずといっていいほどファンの人たちに遭遇しているような気がする。永遠くんは本当にたくさんのひとに愛されているんだね。
 みのりはぼんやりと考え事をしながら歩いていた。

「……!」

 すると突然、押し出されるように体ごと勢いよく前に飛んだ。気づくと目の前に地面があって、手から離れたトランクが地面に叩きつけられバウンドする。ガラス同士がぶつかって割れる、派手な音が辺りに響き渡った。

「大丈夫か!?」

 先を歩いていた永遠が早足で戻ってくる。視線はみのりを気遣うように、彼女の全身にさ迷わせていた。

「あ……うん」

 助け起こそうと、差しのべられた永遠の手。そう遠くないところでファンの人たちの悲鳴があがる。
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