アロマティック
「みのりもストレッチ、やってみ」

 挑戦状を叩きつけられてしまった。
 これは、あとに引けない。
 みのりは覚悟を決めて、テーブルから離れた。
 結果。

「なんだ、俺のこといえないじゃん」

 永遠が前屈をしたみのりに、体をくの字に曲げて楽しそうに手を叩いて喜んでいる。みのりは思い通りにいかない体に、首をかしげた。

「おかしいなぁ。前はちゃんと届いたのに」

 痛くてこれ以上伸ばせそうにない。足の筋がキリキリと悲鳴をあげ、指先が予想よりも手前で止まってしまった。想像以上に出来ない自分にショックだった。

「よしよし、これで俺ばっかりが硬いっていわれなくなるな」

 体が硬い同盟でも作るつもりなんだろうか? みのりが硬いことがわかって、やけに嬉しそうだ。

「体って動かさないと、本当に硬くなっちゃうんだね」

「気にすんなよ。硬くたって体が動けばいいんだって」

 永遠のやたら満足そうな顔が悔しくて、いたずら心が動いた。

「永遠くんと同じなんてやだ」

「おい!」

 永遠がみのりに襲いかかった。わきわき動かしたら指が、みのりのわき腹をくすぐり始める。

「きゃー! くすぐったいっ」

 逃げようと身をかわすみのり。その動きを先読みした永遠が、仰向けの体勢のみのりを掴まえ、腰を跨いで上に乗った。

「覚悟は出来てるんだろうな?」
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