アロマティック
 唇を離すと熱を含んだ沈黙のなか、互いを確かめるようにふたりは見つめあった。
 みのりの瞳のなかに、不安や動揺がないのを見てとった永遠は、顎に添えていた手を彼女の後ろに回した。その手をみのりの髪のなかに差し入れ、より自分へと引き寄せる。みのりは永遠にされるままに身を寄せ、彼に回した手で背中のシャツをギュッと握りしめた。
 ゴンドラの床の固さも、冷たさも、その上に膝立ちのまま抱き合うふたりには関係のないことだった。
 聞こえるのは互いの息づかいと、重なる唇が紡ぎだす音のみ。
 角度を変えて何度も交わすキスに、場所も時間も忘れ……時間?
 ハッとみのりは我に返る。

「永遠くん待って」

 永遠から顔を離し、慌てて周りを見渡す。
 一番高いところを通りすぎた観覧車は、知らぬまに下降していた。さっきは遠く見えたイルミネーション輝くアトラクションが、かなり近いところにあった。

「これ以上待てない……」

 顔を引き寄せようとしている永遠の手から逃れ、のけ反るようにして窓の外を見る。視線を下げると、3つ先をいくゴンドラが地上に着くところだった。
 大変!

「永遠くんだめっもう降りなきゃ」

「降りる?」

「ここ観覧車のなかでしょ! もうおしまいなのっ」

「もう1回乗ろう」
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