アロマティック
 一方。
 その外では、次のシーンの撮影の準備が進められていた。
 監督との用件を済ませた凌が、慌ただしく行き交うスタッフの間に立ち尽くしている。撮影のスタートを待ちながら、その拳を強く握りしめ、必死に感情を抑えていた。

 ぼくにとって。
 細くて小さいきみが、ひとりで精一杯生きているきみが、愛しくてたまらなかった。
 どんなことがあっても前向きな彼女は、太陽だった。
 演技で上手くいかないことがあっても、ぼくを明るく照らして支えてくれたのは彼女だった。
 寂しくて冒してしまった1度の失敗。
 その日からぼくの心はどんよりと曇ったまま、ひたすらに太陽を探した。

 ずっと探していたぼくの太陽。
 やっと見つけた。

 ぼくはもう、きみを離さない。
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