アロマティック
「見てるくらいいいのに」

 天音に邪険に扱われている聖に、みのりは苦笑。「邪魔しないでください!」といいつつも、やっぱり天音と聖がギャーギャーわーわー、じゃれあっているように見える。

「だめ。いまは、俺とみのりの時間」

「え?」

いまの発言は深い意味ないんだよね? 聞き返そうとしたとき、永遠がよしと頷き、

「これにする」

 顔の前に瓶が差し出された。
 マンダリン。いいチョイス。
 甘すぎず、爽やかでフレッシュな香り。永遠らしい精油。
 スプレーボトルに、無水エタノール、精製水、永遠が選んだマンダリンに加え、ラベンダーとラベンサラを永遠の前に揃える。

「精油は水に溶けにくくて、アルコールには溶ける性質なの。だから、始めにアルコールに溶かしてから精製水を混ぜること」

「水と先に混ぜると、油みたいに分離する?」

「する。よく使われるのは無水エタノールだけど、もしなければ、ウオッカとかブランデーとか、果実酒作るときに使うホワイトリカーなんかでも代用できるんだよ」

「えっ酒!? いいの?」

「うん、アルコール度数高いやつならOK」

「へぇぇぇ」

 面白い、と感心している永遠に、自然と笑みが浮かぶ。
 興味を持って、アロマと向き合う永遠の姿が素直に嬉しかった。
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