アロマティック
「ねぇリーダー聞いてよ!」

 聖が衝立に駆け寄る。

「あ? なんだその声。移すなよ」

「ガーン」

 最後の頼みの綱にもあっさりと切り捨てられ、がっくりと肩を落とす聖の様子に、とうとうみのりも吹き出してしまった。
 振られまくりの聖がかわいそうでもある。

「聖ちゃん、打たれ強いから」

 みのりの気持ちを読んだのか、永遠が精油の瓶を手に取りながらいう。

「これでなにか作れないか?」

 目の前に差し出された、永遠の大きな手のひらに包まれている瓶をのぞき込む。
 ティーツリー。
 瓶を見て、それから永遠に視線を移す。そこには知性を感じる澄んだ瞳。
 ティーツリーには、強い殺菌効果がある。風邪気味のときや、喉が痛いときの炎症を抑えたり、インフルエンザの予防にも使える精油だ。
 偶然ではなく、確信をもって、ティーツリーを選んだに違いない。
 みのりは自信たっぷりに微笑んだ。

「超簡単、強力うがい薬、出来るよ」

「教えて」

 みのりからの知識を、ささいなことでも逃さず吸収しようと、永遠はふたりの足がふれ合うほど近くに椅子を引き寄せた。
 本番まであまり時間がないことはわかっていたので、素早く行動に移った。
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