こうべ物語



一歩一歩、七海に近づいて行く。



「七海、君…。」



目を潤ませながら、今度はブラジャーのホックに手を掛けた。



「好きにして…。」



ブラジャーのホックを外した瞬間だった。


その両腕を七海が素早く掴んだ。


そのまま抱きしめる。


その力は麻里奈が感じた事がない程、力強かった。



「七海、君…。」



「何があったのか分からないけど、こんな形で麻里奈ちゃんを抱く事は出来ないよ。」



耳元で七海が呟いた。


その途端、麻里奈強く抱きしめられていた七海の腕からすり抜け、座り込んだまま脇目も振らず泣き続けた。


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