こうべ物語



七海が行方不明になってから暫くして父親に呼び出された。


ショックで憔悴しきっていた麻里奈をよそに、父親はある事を言い渡した。



「再来週の日曜日、ワイン城に行ってきなさい。」



「その前に。」



「ん、何だ?」



「七海君をどうしたの!」



何度も何度も父親を問い詰めた。



「私は知らんよ。」



「嘘、お父様が何かしたんでしょ?」



「私は何もしていない。所詮、麻里奈の前から突然いなくなると言う事はその程度の男だった、と言う事だ。」



何を聞いても、知らないと言われる。


七海の携帯電話は何度かけても使われていない。


石屋川の自宅や通っていた大学へも行きたかったが、執事や家政婦達に監視されているので身動きが取れず行く事が出来なかった。


七海がバイトを辞めた事を知ったのち、同じように麻里奈も辞めた。



(七海君がいないのに、ここに居ても辛いだけ…。)



何もする気が起こらない、考えても考えても辛くなるだけ。


どこに出かけようが常に監視されている。


学校だけは行ったが、それ以外は部屋から出ない日々が続いていた。


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