沖田総司と運命の駄犬



高ぶった気持ちも、落ち着き、フッと顔を上げると辺りは、真っ暗になっていた。




梓「ヤバ・・・。早く帰らないと、怒られる・・・って、どうやって?」




暗くなると、周りの雰囲気も変わる。




どうしよう。帰り道、わかんない・・・。




取りあえず、灯りのある方に向かうことにした。





昼間、見たときも少し怖い雰囲気だったが、暗くなると、怪しい雰囲気も、加わり、怖くなり、足早に歩く。





すると・・・。




「お兄さん、うちと遊ばへん?」




いきなり、腕を掴まれる。




梓「いやっ。あの・・・。わ・・・。お、俺、早く帰らないと・・・。」




「ふふっ。可愛らしいなぁ。こっち。」




強引なお姉さんに、グイグイ、引っ張られる。






すると・・・。




連れて行かれた先に、強面の男の人が沢山いた。




梓「え・・・っと。」




男「お前か?わしのコレに、手を出したんは?あぁ?」




と、小指を立てて、睨まれた。





梓「手を出したって・・・そんな事、してません!失礼します!」





女の人の腕を振り解き、その場から、離れようとすると・・・。





男「おいおい、それはないやろ!まぁ、俺も、鬼やない。金で、話、付けたるわ。」





梓「わ、俺は、何もしてない!」





男「そんなんが、通用すると思ってんのかっ!んなら、身包み剥がすのみやなぁ。」




数人の男が、ジリジリと、寄ってきた。




梓「ヤダ!」




私は、足が、もつれそうになりながら、走った。





「待ちやがれ!コノヤロウ!」




梓「ヤダよぉ!だ、誰かっ!助けてっ!」




私は、一目散に、逃げた。





しかし、闇雲に、逃げたせいで、ここが、どこだが、全くわからなくなってしまった。





すると、ギュッと、手首を、後ろから、掴まれた。







梓「キャッ!」




「捕まえたで。くくくっ。」




その男は、厭らしい笑みを浮かべる。





梓「だ、誰かっ!」





引きずられて行かれそうなとき、背後で声がした。





「その子、うちの子だから、返してもらえる?」




この声・・・。





私は、クルッと後ろを見た。





やっぱり・・・。





沖田先輩だった。





沖田先輩は、刀を、抜いて、こちらを睨んでいた。





梓「お、沖田先輩っ!」




沖田先輩の所に、駆け寄ろうとすると、手を引かれて、首元に、刀を、這わせられた。




梓「っ!」




「コイツは、俺の女に手を出した。その落とし前は、お兄ちゃんが、してくれるんか?」





沖田「はぁ?梓・・・。そっちの趣味があったの?それだったら、その男の言うのは、仕方ないけど。」




梓「ありませんっ!私の好きなのは、男です!シンが好きなのっ!」




ギョッとした男の顔に、お腹を押さえて、笑う沖田先輩。




沖田「今の聞いたでしょ?その子は、男が、好きなんだって!だから、おなごに、手を出すとか、有り得ない!離してもらえる?」



すると、男は、逆上した。




男「どうでもいいんだよっ!そんな事はぁっ!」




刀が私に目掛けて振り下ろされた。





もう、ダメだ。




ザシュ。




ザンッ!





「う゛っ・・・。」




梓「え・・・?」





すると、後ろに、刀を振り下ろした、土方さんがいた。




目の前で、血を吹き倒れる男・・・。




梓「い・・・っ!嫌あぁぁぁぁ!」




土方「オイ!うるさい!」




土方さんが、私の顔を、自分の胸に、当てて、片手で、ギュッと、抱きしめた。





震える私の顔を、自分の胸に押し付けて、周りを見せないように、歩きだす。




土方「後は、頼む。」




沖田「はいはい。」





私は、引きずられるように、その場から、立ち去った。



< 18 / 222 >

この作品をシェア

pagetop