沖田総司と運命の駄犬


梓「沖田先輩っ!まだ、立ってない!」




沖田「え?あぁ。ごめん。早く起き上がりなよ。廊下を掃除してるのは良い心がけだけど。」




梓「もぉ!私、最近、ずっと自分の着物で、廊下の掃除してますっ!」




沖田「そっか。それは、それは、綺麗になって良いことだ。」



梓「意地悪いですね。」




沖田「そうかな?いつも、僕をイライラさせるどっかの誰かさんのせいでしょ?」




梓「それは、誰でしょうね!」




また、僕達は、いつもの冗談を言い合う。




部屋に戻り、寝支度をしていると、梓が、謝ってきた。




梓「沖田先輩。今日は、すみませんでした・・・。」




梓が、謝るなんて、明日は雪?




沖田「何?いきなり。梓が素直だと、何だか調子狂う。」




梓「なっ!私だって、デートの邪魔をした事くらいわかります!」




沖田「でえと?」




梓「え・・・っと・・・。何だっけ?あぁ。逢瀬だ!」




沖田「逢瀬?誰と誰が?」




そんな約束なんて無いし、謝られることは、“その件に関しては”無い。



梓「沖田先輩と里音さん・・・。」




沖田「え?あぁ・・・。別に良いよ。ん?何で、そんな顔してるの?」




別に、約束なんてしてない。




梓は、辛そうで、少し嫉妬が目に浮かんで、今にも零れそうな涙を我慢しているおなごの顔をしていた。



梓「え?そんな顔って、どんな?」




僕は、梓の頬を撫でた。




沖田「泣きそうな顔。僕が、里音と逢瀬するのが、そんなに嫌なの?」




梓「え?いや・・・それは、その・・・。」




俯いた梓の顔は見えなかったけど、何か、言いた気だ。




やきもち妬いてる?




梓が、僕と里音の事を?




それって、僕の事を好いてるって事だよね?




沖田「梓・・・。」




僕は、優しく声をかけると、梓が上を向いた瞬間に唇を合わせた。




梓が、僕の事を好いてる・・・。




そう思うと、嬉しくて、梓に触れていた。




沖田「梓は、僕のこと好いてるって思っていいの?」




梓「え・・・?」




沖田「だって、今のって里音にヤキモチ妬いてるってことでしょ?」




梓「あ・・・。」




そう言うと梓の顔が、真っ赤になった。




沖田「可愛いね・・・。そういうの。」




僕は梓を優しく抱きしめた。





そう・・・。まるで、宝物を手に入れた気持ちだ。



沖田「僕の事、好いてるの?」




梓「あ・・・好・・・。」




梓の「好いてる」って言葉が聞きたい・・・。




沖田「梓・・・?」




軽い口付けをして、僕は、梓の顔を覗く。




梓は、真っ赤な顔で、僕にしがみついている。



梓「だって、沖田先輩は、里音さんと・・・。」




まだ、言ってる。




沖田「ぷっ!そんなに、僕と里音が気になるんだ。」




梓「き、気になります!だって、私、沖田先輩の事が・・・っ。」




沖田「僕の事が?」




梓「好きなんですっ!」




沖田「っ。」




聞きたかった言葉が・・・梓が僕を好いてるって言った・・・。




僕のこと、男と意識されていないのかと、思ってたけど・・・。




梓「あの・・・。沖田先輩?」




梓の声で、我に返る。




僕は、恥ずかしさを隠して、意地悪に笑う。




沖田「へぇ・・・。梓は、僕の事、好いてるのか・・・。そっか、そっか。くくくっ。」




僕は、梓を抱き寄せて、梓の肩に、額を付けて、赤くなった顔を見られないようにするけど、自然に笑みが出る。




梓は、僕と里音の事を気にしている。




梓「沖田先輩と里音さんって、どういう関係ですか?」




沖田「え?客と芸妓。それだけ。」




梓「それだけって・・・。でも、あんな事とか、そんな事とか・・・。」




梓が僕と里音のまぐあいを想像して、真っ赤になってる。




沖田「アハハハハッ。梓でも、そんな事、考えるんだ。」




梓「え?あ!心の声が、漏れてた!」




沖田「くくくっ。厭らしいなぁ。梓は!」



梓「違っ!もぉ・・・ヤダァ・・・。」




梓は、耳まで真っ赤になって、僕の胸に、自分の顔を押し付けた。




僕は、梓の髪を撫でて、梓の頭に唇を付けた。




沖田「梓・・・?顔を見せてよ。」




照れている梓が、可愛くて仕方ない。




梓は、顔を横に振る。




沖田「そっか。じゃあ、飼い主の言うことを聞いてもらおうか。」



梓の顎に手をかけて、上を向かせた。





梓「あ・・・。沖田先輩・・・。」





至近距離で、僕は、梓を見つめる。




沖田「僕も好いてるよ。」




梓「え?今、何て・・・っ。」




二回も言わないよ。




聞き逃す方が悪い。




だんだん、深くなる口付け。




梓は、口付けの合間に囁く。




梓「沖田先輩・・・好き・・・です。沖田先輩は・・・っ。」




だから、言わないって。




梓は、トロンとした目で僕を見つめてきた。




もうダメだ。




ずっと、お預けだったから、もう、我慢出来ない。





僕は梓をゆっくり押し倒した。





沖田「梓・・・。」




梓の身体に、指と唇を滑らせる。




沖田「梓・・・。梓は、僕のだから、これからは、絶対、誰にも、触れさせてはダメだよ。」




梓「はい・・・。」




約束だよ。




僕は、梓と唇を重ねる。




そして、僕達は一つになった。




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