沖田総司と運命の駄犬
お前は、似てるね~沖田side~



僕は、大坂にいる松本先生の治療を受けていた。




松本「はぁ・・・。沖田君。無理は禁物だ・・・。」




沖田「はい。先生、近藤先生は大丈夫ですか?」




松本「君という奴は・・・。近藤殿は、大丈夫だ。」





沖田「良かった・・・。」




松本「また来る。」





そう言うと、松本先生は、部屋を出ていった。





結局、お偉い先生に診てもらっても、「安静にしろ。」だ。





死ぬのは怖い。





見ないフリもしたし、何故、僕が病なんかにかかってしまったのかとも恨んだ。




病で死ぬくらいなら、切腹したいとも思い、近藤先生にお願いもした。




でも、近藤先生も、土方さんも、許しては、くれなかった。




近藤先生は治ると・・・。





でも、僕は、土方さんが言うように病で死ぬのだろう。




今は、少しずつ受け入れている。





そんな時、近藤先生が、部屋に来てくれた。





沖田「病が、先生に移っては、いけませんので・・・。」




そう言っても、先生は、僕の寝ている所まで来て座られた。




近藤「総司、安心しろ!俺は、病なんぞ移りはせん。」




僕もそう思ってたのに移ったんだ。




何の根拠もない。




僕は、布団を口の所まで引き上げ、零れる咳が、せめて、近藤先生に、かからないよう気をつけた。





近藤「具合は、どうだ?」





沖田「えぇ。いつもよりかは・・・。」






近藤「そうか・・・。」





近藤先生は、少し寂しげに笑う。





近藤「お!そうだ!コイツをお前に持ってきたんだ。」




そう言うと、近藤先生は、懐から黒い塊を出した。





近藤「黒猫だ。いきなり、俺の部屋に来て、飛びついてきた。黒猫は、肺の病を治すと言うだろう?だから、コレを側に置いておけ。」





黒猫は、ピクリと耳を動かしてゆっくり僕を見た。





猫「ニャッ!」




猫は勢いよく僕の顔にぶつかった。





沖田「痛いっ!」




猫はマジマジと僕を見て、すり寄って来た。





僕の顔を舐めている。




沖田「くすぐったいよ!」





そう言うと、猫は、僕の顔中を舐めてきた。



沖田「コラッ!僕が何も出来ないと思って!」




僕達のやり取りを見ていた近藤先生が、嬉しそうに言う。





近藤「お前たちを見ていると、梓と二人でじゃれていた時を思い出す。」





沖田「この黒猫がですか?僕は、梓を、ずっと犬だって言ってたのに、猫になって戻ってくるって、確かに、梓らしいですけど・・・。」





そう言うと、近藤先生は、撃たれた肩が痛むということで、出て行かれた。





すると、猫が、僕の布団に入り込み、僕の懐に潜り込んだ。




沖田「お前は・・・っ。」





「温かいね」って言おうとしたら、猫は、僕の体を舐め始めた。





沖田「ちょっ・・・っ。」




僕の感じる所を絶妙に、舐めてくる。




沖田「ちょっと、止めてよ!梓っ!・・・え?」





僕は、猫を懐から、取り出して、顔を見た。





照れているような仕草で、僕を見る猫。




沖田「梓・・・なの?」





すると、猫が、元気良い声で、「にゃーん。」と鳴いた。





沖田「何でっ・・・っ。猫!?あれだけ犬って僕が言ってたのに・・・っ。」





姿は、猫で、言葉も話せないけど、何となく、いや、この猫は、きっと、梓だ・・・。




僕がギュッと猫を抱きしめると、猫は、僕の胸に顔をすり寄せた。




梓が、戻って来てくれた。




僕は、嬉しくて、嬉しくて、猫を何度も、ギュッと抱きしめた。





沖田「君は、僕の大事な大事な女(ひと)にそっくりだ。君の名前は、僕の大事な女の名前をあげるね。梓?」




猫は、嬉しそうに、にゃーんと鳴いた。
< 213 / 222 >

この作品をシェア

pagetop