沖田総司と運命の駄犬



それから、私は、沖田先輩の側を離れずにいた。





沖田先輩は、浅い呼吸と共に、咳き込み、血をよく吐いていた。




そんな苦しそうな沖田先輩に、猫の姿の私は、何もしてあげれない。





それが、もどかしくて苦しい。





私が、血まみれになっている口元を舐めていると、沖田先輩は、弱々しい手付きで私の頭を撫でる。




沖田「はぁ・・・。はぁ・・・。ありがとう。梓・・・。」





血を吐きすぎて、人を呼びに行ったことも度々あった。






そんな時、何かの隊務で、新選組は、江戸に行くことが決まった。






土方「総司、どうする?お前の体では、キツいだろうが・・・。」





沖田「行きますよ?故郷に寄るんですよね?帰りたいし・・・。梓にも僕の故郷を見せてやりたい・・・。」





土方「そうか・・・。」





土方さんは、少し寂しそうな顔で、私の頭を撫でた。





土方さんは、部屋を出て行った。





私は、土方さんの表情が、気になり、部屋を出て土方さんの後を追った。






梓「土方さん・・・。」





私は、縁側に腰掛けた土方さんの膝に乗って顔を見上げた。





梓「っ!」





土方さんは、手を目に当てて、震えていた。





泣いてる・・・。





どうして?どうして泣いてるの?





私は、土方さんの頬からこぼれ落ちる涙を舐めた。




土方「梓っ・・・。」





堪えられなくなったのか、土方さんは、私を抱きしめて、声を上げて泣いた。





土方「もう・・刻がねぇ・・・。江戸に行ったら総司は・・・っ。こんなんじゃ知るんじゃ無かったっ・・・っ。全部、全部、史実通りじゃねぇかっ!知ってても、何も変えれねぇ・・・っ。」





史実通り?




そっか・・・。





土方さん、向こうに行ったときに、歴史を勉強したんだ。





だから、自分達が、どうなるのか知ってるんだ。





私は、未来から来たのに、何も知らない。





この後、皆がどうなるのか・・・。





私は、土方さんが、私を離すまで、腕の中にいた。







しばらくして、腕の力が緩まった。






土方「すまなかったな。でも、お前は、本当に、梓みてぇだな。梓、俺は、もう、大丈夫だ。総司んとこに行ってやれ。」




土方さんは、私の頭を撫でると立ち上がった。






私は、沖田先輩の所に戻ろうと踵を返そうとすると声をかけられた。





土方「梓っ!総司を・・・総司を頼んだぞ!」




真っ赤な目をした土方さんは、何か吹っ切れたような顔付きだった。





梓「はい!」




私は、返事をして、沖田先輩の部屋に戻った。
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