最初で最後の、恋だった。






あたしが昨日から大事に持っていた料理本を見ながら、お弁当を作る。

家にはない色々な調味料があり、それを使ったおかずも作れた。

家で作るより、多くのおかずが作れる…。

先輩の家…良いな……。



同時に朝ご飯も作った。

まだ眠そうな先輩だけど、嬉しそうに微笑んで、沢山食べていた。



「俺着替えてくるから、玄関で待ってて」

「はい」



玄関で先輩が下りて来るのを待つ。

そして、改めて思う。



…静かな家だなぁ。

まるで、誰もいない感じだ。

先輩、笑顔だけど…どこか寂しそうな笑みを浮かべるのには、何か理由があるのかな?




「望愛ちゃん、お待たせ。
行こうか」

「はい」



手を差し出され、あたしはその手を握り返す。






しかし、その手も学校付近で離れた。

あたしが何かされないよう心配する、先輩なりの優しさ。

先輩と離れて行かなくちゃいけないのは辛いけど、しょうがない。

先輩の優しさを、受け取らなくてはいけない。





ソウ、

思ッテタ……。







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