どうしてもママ、子供のまま。
歩み


『ねぇ…佑』

「ん?」


病院の帰り道。
タクシー代払ってあげるから車で帰れ、なんてガミガミ言っていた堺先生を無視して、私たちは歩いて帰った。


暗い夜道。
寂しくないのは、あなたと居るから。







『私ね…この子を守るの。命がけでも、この子を守る』

「朱美…」




私は、まだ膨れてもいないお腹をさすりながら話した。
この、限りなく小さな命。

私のお腹の中で…懸命に生きようとしてる。
私、この子を守りたいと思った。
親心、なんて言うにはまだ早すぎるかもしれないけど、そんな気持ち。


この命のために私の命をかけて守りたい、という、綺麗事でも嘘でもない本心。




「おまえは、いいママに恵まれたなー」

私の顔を見ながら、私のお腹に手をあてて話す佑。



これからのことは、まだなにも決めていない。

…けど……




「おれも、朱美と子供を、命がけで守るから」


暗い夜道のど真ん中。
私たちは命を懸けて約束した。



〝この子と、あなたを守る″と。




それはまぎれもない本心だった。
私も佑も一致した、初めての想い。



〝始めて″だらけで、何もわからない。
持っているのは、〝無力″だけ。

けど、ここからが始まりだ。
わたしたちはめげない。




暗い暗い、暗ーい夜道。
私の右手と、佑の左手。

お家に着いたら、コーヒーでも飲みながら、これからのことについて話そうよ。




固く手をつないで、私たちは家路についた。

< 19 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop