狂気の王と永遠の愛(接吻)をイメージ画集とつぶやきの場

10/16 仙水とアオイとキュリオと…セシエル①

(…誰かと眠るのは何十年ぶりか…しかもこのような大勢で……)


仙水の隣りにはセシエルがいるため、彼は居心地悪く寝返りを打ち、悠久の王たちへ背を向けた。


(…こんなはずでは…)


不本意な夜を迎えることとなってしまった仙水はいつまでも眠りにつくことが出来ず…やがて上半身を起こした。

そして…


「スースー…」


健やかな寝息に誘われ視線を先に向けると…

優しい父の腕の中で安心しきった顔をして眠るアオイと、わずかな隙も生まれぬよう…その体をしっかりと抱きしめて眠るキュリオ。


世間一般ではどことなく違和感のある光景かもしれない。

もはやこれは年頃の娘が親離れ出来ないという次元の話ではなく、互いが互いのぬくもりを欲して今に至っているに違いなかった。


「……」


(…素直なアオイさんのこと…何の疑いもなくキュリオ殿にそう躾けられたのでしょうね…)


小さなため息をついた仙水は部屋の隅にある椅子にかけられた上着を羽織ると、ひとり部屋を後にしたのだった―――。



―――コツン…コツン……



風化した庭を見下げながら通路を歩き、中庭を見渡せるテラスへとやってきた仙水。


建物だけはしっかりした造りなのだろうが、それでもいくつかの巨大な大理石の柱に見受けられるヒビ。


「……」


錆びれた風になびく髪を揺らしながら彼は一体何を考えているのだろう。

視線を手元に戻した仙水は右手を強く握りしめるが…


(…まだ力は戻らない…か…)


常に力を消費し続けている彼は本来戦えるはずもない体なのだ。


(彼らと今戦ったとしても勝敗は見えている…悠久の先代…セシエル王)


(なぜ彼が我々の存在を…時を越えてまで現れるとは、いくら王といえど…一人で成せる技とは到底思えない。…他に手を貸している者がいるということか?)


仙水は嫌な予感が拭えずにいる。
どう考えても彼らの後ろに何者かが息を潜めている気がしてならないのだ。


「…私たちの後ろに誰かいるって?なかなか鋭いね君…」


「…っ…」


はっと振り返った仙水の視線の先にいたのは…




「セシエル殿…」





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