恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



けれども、谷口のこの詮索は、古庄の思考に“クリスマス”を意識させる。


――確かに、今年のクリスマスは、二人っきりで過ごせる最初で最後のクリスマスなんだよなぁ…


授業の入っていないその日の午後、古庄は新聞を読みながらそんなことを思った。


去年のクリスマスは、結婚どころか恋人同士でもなかった。
想いは通じ合っているのに、真琴が女友達だけでクリスマスパーティをしているらしいのを、古庄は羨ましく思いながら傍で見ているしかなかった。


そして来年は、我が子が生まれている。
もうハイハイを始めるころだろうか。その我が子を囲んで3人で過ごすクリスマスを思い描いただけで、その幸せに古庄の顔はニンマリと緩んだ。



独り身を楽しんでいたいつもの年なら、クリスマスのことなんて頭に過りさえしなかった古庄でも、愛する伴侶を得たならば思考も変化する。


愛しい真琴を幸せという真綿でくるんで、思いっきり甘い時間を二人っきりで過ごしたい…。


そこまで思いが及ぶと、白昼の職員室にいるにもかかわらず、男ならではのスケベ心も騒ぎ始める。

キャンドルのほのかな明かりの中で真琴と抱き合い、真琴が甘い吐息をつきながらキスしてくれることを想像して、古庄の息は荒くなった。



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