恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



しかし、真琴はその石井の腕を振り払って、言うことを聞こうとしない。



「…早く!早く探さないと!!一晩中こんなところにいたら、和彦さん…死んでしまう!!」


自分の中にある不安を言葉にして口にすると、真琴はもう我慢が出来ずに感情を爆発させた。

涙が一気に流れ始めて、濡れた頬はあっという間に冷たい風によって冷やされる。


こんな取り乱し方は、冷静で思慮深い普段の真琴からは想像もつかない。

泣きじゃくる真琴を見て、石井は息を呑んで一瞬固まった。
そして、すぐに我に返り、先ほどよりも強い力で再び真琴の腕を掴み直す。



「それで今あなたが出て行ったら、あなたの身まで危なくなるわ。…お腹に赤ちゃんがいるんでしょう?……古庄くんはあなたに助けに来てもらいたいなんて思ってない。あなたと赤ちゃんには、安全なところで待っていてほしいって思ってるはずよ」



石井の説得を聞いて、真琴も抵抗するのをやめた。



「大丈夫。古庄くんは、きっとあなたのもとに帰ってくる」


石井はそう断言した。
涙を湛えた震える瞳で、真琴も石井を見つめ返す。


石井がそう言い切れた言葉の裏には、ある確証があったからだ。



――……だって、古庄くんはお腹の赤ちゃんの父親なんでしょう?




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