恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
それら一つ一つを思い出す度、気持ちはまるでその時に戻ってしまったかのように、切なく疼いたり、甘く痺れたりする。
けれども、それら思い出の一つ一つは古庄を苦しめるものではなく、暖かい布団のように幸せで古庄を包み込んでくれる。
思えば、あの麗らかな春の日、しだれ桜の下にたたずむ真琴と出逢った瞬間から、いつも古庄の心のまん中には真琴がいて、その人生も変わり始めた。
そして、これからも――。
真琴の中に息づく、小さな命の存在を知らされた日のことを思い出す。
とてつもない喜びを感じると同時に感じた、大きな「責任」。
だからこそ、自分は何としても、真琴とお腹の子どものもとへ帰らなければならなかった。
真琴の中から産まれ出てくる赤ん坊は、どんなにか可愛いだろう。
女の子だったら、真琴のように可憐な少女に成長してほしいし、男の子でも……やはり真琴のように思慮深く賢い子になってほしい。
そして、真琴の要素で埋め尽くされた中に、自分の片鱗が見えさえすれば、その命は紛れもなく自分たちが愛し合い、二人の命が溶け合ったものだと確かめられる。