恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「…この手も…、足も…。どんなに冷たかったか…。あの吹雪の中で…、どんなに寒かったか…。なのに、私は何もできなくて…、あなたを助けてあげられなくて……ごめんなさい」
自分がどんなに心配して辛い思いをしたのかは言葉に出さず、そんな風に言ってくれる真琴の言葉を聞いて、古庄の喉元には、言いようのない感情がせり上がってくる。
申し訳なさと、愛しさと切なさと…。
古庄の目には涙が滲み、いっそう強い力で真琴を抱きしめる。
どんなに冷たい風雪にさらされるよりも、古庄にとって真琴に会えなくなることの方が怖かった。
真琴を失ったら、その時こそ自分のこの命は尽きてしまうと思った。
「君が謝ることなんて、一つもない」
古庄は真琴の正面に回り込んで、真琴の涙で濡れた顔を覗き込んだ。
「むしろ、君がいてくれたから、俺は戻って来れたんだよ。あの雪の中でも、君はずっと俺の名前を呼んでくれてたし、君にもう一度会うことだけを思って、雪が止むまで俺はじっと眠らずに待てたんだ」
古庄の言葉を聞いて、真琴は古庄の顔をじっと見上げた。
「…私が呼んでいるのが、聞こえましたか?」
「うん、聞こえたよ」
真琴が安堵したように目を閉じると、その目から再び涙が零れ落ちた。