恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



佳音の心は古庄を恋い慕って求めているのに、反面、古庄の顔を見ることさえ辛くなり、いっそう足は学校から遠のいた。



それでも、佳音の中に灯り続けている、一つのほのかな灯りがある…。



『森園さんがいなくなったって聞いて、古庄先生は血相変えて真っ先に探しに行ったから――』



あの雪の日に、石井から教えてもらったこの事実――。
あの日から佳音は、この言葉を頼りに生きているようなものだった。


真っ先に動いてくれたということは、その時だけは古庄の中で自分は一番になれた。
血相を変えてくれたということは、それだけ自分のことを大事に思ってくれているということだ。
何よりも、自分を探してくれていた時間だけは、古庄は自分のことだけを考えてくれていた。


そうやって、自分を励ますように考えていると、ますます古庄への想いが募ってゆく。

行き場のないその想いは、佳音の心の中で暴れ始めて、佳音はもうそれに耐えられなくなる。




修学旅行から帰って、10日も経とうかと言うその日、ずっと学校にやってこない佳音を心配して、古庄が家庭訪問に来た。



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