恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄が一歩足を踏み入れた途端、きらびやかな店内の空気が変わる。
ジュエリーたちが輝きを放つ中で、古庄の存在はひときわ光り、誰もが息を呑むほどまぶしいものだった。
凝視はされていないが、店員一同からの意識を一身に浴びているのを感じる。
初めての場所に行くといつものことなので、普段の古庄ならば気にしないのだが、この日は“指輪を買う”という初めての経験にドキドキしていた。
古庄は店内を見回して、指輪が並ぶガラスケースを覗いて見る。その場にいた若い店員が緊張した面持ちで口を開きかけた時、
「どう言ったものをお探しですか?」
と、横から年配の店員が古庄に声をかけた。すると、若い店員の笑顔がいささか苦くなる。
「ええ、婚約指輪を贈りたいんです」
しかし、目を上げた古庄の微笑みを見て、どちらの店員も同様に一瞬動かなくなった。
「…婚約指輪でございますね?どうぞこちらへおかけください」
呪縛を振り払うように、気を取り直した年配の方が、別の場所にあるテーブルと椅子を指し示す。
そして、適当なものを見繕って、いくつかの指輪をベルベットのトレーに載せて出してくれた。