恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
生徒たちが一つ一つ丹精込めて、成功させようとしている“結婚式”。
生徒たちの苦労を無駄にしたくなかったし、石井自身、生徒が作り上げたその絵の中にこの二人をはめ込んで、幸せな様を堪能し、分かち合いたいと思っていた。
「そう言えば、賀川さん。引っ越しするんでしょ?いつ?」
「あ、4月の初めの春休み中に」
石井が新たな話題を持ち出したので、真琴は美容院のことよりも差し迫った引っ越しのことが気になってくる。よく考えると、引っ越しまでにもうあまり時間がない。
「お腹が大きいと、大変でしょ?何か手伝えることがあったら、何でも言ってね」
石井はそう言ってくれたが、来年度もこの学校に残る石井には、春休み中も会議やいろんな仕事があるはずだ。
「うん、ありがとう。でも、少しずつゆっくり荷造りしてるし。それに、一人じゃないから」
真琴から何気なく出てきたこの言葉に、石井はほのかに顔を赤くする。
「そっか、旦那様がいてくれるんだね。どう?役に立つ?」
石井のこの質問に、側にいた古庄の体がピクリと動いた。
かたや石井が、チラリと古庄の反応を確かめた瞬間、バチッと二人の視線が出合った。