恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜




「病院には行かなきゃいけません。だけど、こうなる原因は判ってます…」



「………え…?」



真琴の言ったことを確かめるように、古庄は改めて真琴の顔を覗き込んだ。


古庄の疑問が漂う端正な顔を見つめ返して、真琴は大事なことを告げる勇気をためた。




「……私のお腹に、赤ちゃんがいます」




真琴の顔を見つめたまま、古庄は言葉をなくす。


唇が震え、澄んで涼しげな瞳には涙がにじんだ。

掛布団の上に置かれた真琴の左手を取り、その震える唇に押し当て…



「ああ…!真琴……!!」



やっとのことでその一言を絞り出した。

そして、自分の中に充満する感覚を処理する間、目を閉じ真琴の手を握りしめた。



「…俺が今、どれだけ嬉しいか、君に解るかい…?」



まぶたを開き、再び真琴を見つめ直した古庄の目から、涙がこぼれた。


真琴も初めて目にする古庄の涙だった。



「解ります…私も同じくらい嬉しいから……」



そう答えると、同じ喜びに真琴の心も震えて、堪えきれず涙を落とした。


古庄は、その腕に真琴をきつく抱きしめたい衝動を、グッと我慢した。


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