恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
そのことに気が付いた真琴は、そそくさと帰り支度を始めた。
隣の机にやはり古庄の姿はなかったが、先ほどとは違い簡単に片づけられ、いつも置いてある新聞がなくなっている…。
――…部活にでも行ったのかな…?
だったら、古庄はきっとお腹を空かせて帰って来る。
真琴は重い体を奮い立たせて、家路を急いだ。
愛しい人に、喜んでもらうために。
いつも真琴の作った料理をおいしそうにぺろりと食べあげて、満足そうに笑ってくれる…そんな古庄の笑顔を思い浮かべると、真琴の体は芯から温かくなって、自然と力が湧き出てきた。
それから真琴は、いつもの金曜日のように、スーパーに寄って買い物をした。
アジを買ったので南蛮漬けにして、あとの副菜を考えながら、車を走らせる。少し遅くなってしまったので、あまり手のかかったものは作れないと思いながら。
そんな風に急いでいる時に限って、信号に引っかかり、真琴は車を停車させ溜息を吐いた。
ふと、道路沿いにあるファミレスに目をやると、暖かな光が漏れている。
その中で食事をする人たちの姿に、真琴の意識が止まった。
そして、その中の一人に、真琴の目はごく自然に吸い寄せられて……そこから視線を動かせなくなった。