ふわふわ。

そんな感じで盛り上がっていたら、気づけば倉坂さんが飲み会に“いる”のにも、皆が慣れてきたらしく、賑やかな雰囲気で打ち上げは終わった。



「二次会いく人~?」


ほんのりと赤い咲良さんが色っぽい。


「行くよな? 行かないなんて抜かすんじゃねぇぞ~?」

運がよいのか悪いのか、咲良さんに首を絞められている同僚に苦笑い。


「咲良さん……いい人なんですけれどねぇ」

「咲良は、どんな時にも全力なのだそうです」

「ああ、そうですね。そんな印象です」

と、何故か隣に立つ倉坂さんの横顔を見上げ、それから首を傾げた。


「そう言えば、珍しいですよね。倉坂さんが打ち上げに参加なんて」


咲良さんを見てた横顔がゆっくりと下りてきて、それからじっと……。



なんだろう?



「まさか、研修をする羽目になるとは思ってもみませんでしたが」

研修?

「営業の面子は……ある意味で人が悪いです」

「ああ。堺さんの件ですか」

確かに、ある意味では研修だよね。

そして、ある意味では人が悪い。

うん。
確かにね。


「そもそも。僕はお酒は飲めませんので、飲み会に参加すると、返って迷惑になります」

「え。そうなんですか?」

それは知らなかった。

「はい。学生の頃は頑張ってみましたが……飲むと吐くか眠ってしまうかのどちらかになってしまいますから」

「はぁ……そんなに弱いんですか」

「はい。ですから、飲みに誘われれば断るしかありませんし」

ふーん。

そっか。
と言うことは、今まで飲み会に参加しなかったのもそのせいなんだ。

もしかして、お誘いかけた女子社員の“お誘い”は、“飲みに行きましょう”だったのかな。

「よく、今日は参加するつもりになりましたね」

何故か無言になる倉坂さん。


「…………」


「…………まぁ」


まぁ?



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