ふわふわ。

「咲良さんっ!?」

「大丈夫ですか?」

ざわつくフロアで、ファイルが散乱したなかに膝をついた咲良さん。

牧野さんが真っ先に飛んできて、咲良さんの傍らに立つ。

「全く。無茶するから」

「……っさいなぁ。牧野は」

額に手を当てる牧野さんの手を、邪険に払いのけて、咲良さんはファイルを拾いだした。

「咲良。いいから休みなさい。そんな体調でウロウロされたら迷惑だから」


いつも穏和な牧野さん。


ニコニコお母ちゃん的な事務主任の牧野さんは……


実はキツイ。


「閑散期なんだし、師走の方が忙しいんだから。今から無茶しても仕方がないでしょう」

確かに。

私もそう思うし。


「大丈夫よ。咲良の書類なら山根さんに引き継ぐから」


……いやですが。


ひきつる私に、菩薩の笑顔を向ける牧野さんが怖い。


「頑張ろうねぇ、山根さん」

「……頑張りましょう」


仕事は嫌いじゃないし。

確かに閑散期に入りつつある今は、つかの間の休息みたいなもので、これから忙しくなっていく時期でもある。

今は無理しないで体力温存して欲しい……と言うのは、今後を見越してのことでもあるし、私は無駄に元気だし。

ファイルを受け取って、熱が高いのか、目元を潤ませてる咲良さんに苦笑した。

「残業。慣れてますから」

「ごめんねぇ?」

「気にしないでください」

「そうじゃなくて、それ、企画と合同のコンペの書類だからぁ」

「…………」

いや。
そこ気にしないでいい……

気がつくと、隣に倉坂さんが立っていて、少しだけ潜められた眉がチラリと私を見た。

「半分受け持ちます」

「お、お願いします」

ちょっとだけ微妙な空気が流れた。

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