ふわふわ。

「……計画してます?」

「以前にも行きたいとおっしゃってましたし。よければ来週」

「…………」

追い込んできた。

「それに嫌われていない様ですし」

嫌ってもいないけど……

確かに、そうだけど。

カタン……と、小さな音がして、倉坂さんが近づいてくる。

近づいてきて、背後に回るとポンポンと頭を叩かれる。


「あまり無理はしないで下さい」


そう言って、書類を半分持って自分のデスクに戻る倉坂さん。

……仕事の事?
それとも、泊まりで温泉に行く事?

思えば、倉坂さんていつも待っていてくれている。

「焦らないんですね。倉坂さんて」

「焦ると失敗しますから」

それは仕事?

そうじゃなくて、私達のこの微妙な関係?

どっちつかずで曖昧で、なんと言うかふわふわ宙ぶらりん。

あー……頭が仕事モードから外れていく。


「俺はガツガツ行くような年齢でも性格もしてませんし」

カタカタとキーボードを打つ音が響いてきて、その音に耳を澄ませる。

うん。
この音って好きだなぁ。

思えば残業中の、昼間とは違った顔を見せるフロアも好き。

普段と変わらないはずなのに、普段とはまた違った空気感。

それは疲れたり、アットホームだったり、ゆっくりだったり早かったり。

何だか色んな事があったなぁ。

< 54 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop